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研究の背景と経緯
敗血症は,細菌,ウイルス,真菌などの感染症によ
る全身炎症に臓器障害を伴う病態であり,進行すると
多臓器不全や敗血症性ショックといった重な病状と
なる
1)
.この多臓器不全の発症には,免疫血栓形成が
重であると考えられている.免疫血栓形成機序はま
だ全てが明らかになっているわけではないが,感染時
の刺激による好中球-血管皮接着やneutrophil
extracellular traps(NETs)の放出を起として,こ
の好中球,NETs 上への血小板の接着集積やフィブリ
ン重合により形成されると言われている.本,免疫
血栓は細菌の封じ込めや殺菌に寄しているが,敗血
症の激しい全身炎症状態により,免疫血栓形成の制
御が著しく損なわれ全身で無秩序に形成されるように
なると,全身の臓器で虚血・低酸素状態が引き起こさ
れ,さらに活性酸素による組織障害が起こり,多臓器
不全へと進行する
2)
.この敗血症を治する為に,炎
症性サイトカインや菌体成分そのもの若しくは自然免
疫をブロックする治の開発が行われてきたが,成
功した事は存在せず,これまでとは全く異なった視
での創が必とされている
3)
.
Histidine-rich glycoprotein(HRG)は,主に肝臓で
産生される分子約75kDa の血漿タンパク質で,ヒト
血漿中に高(約 1 µM)存在する.HRG は 4 つの
ドメイン構造(シスタチンライクドメイン 1 ,シスタ
チンライクドメイン 2 , ヒスチジン-プロリンリッチド
メイン,C末端ドメイン)より形成されており,この
うちヒスチジン-プロリンリッチドメインはGHHPH
モチーフを12回繰り返す徴部位を持つ
4,5)
.HRG
は々なリガンドと結合することが知られており,ヘ
パリンやフィブリン,フィブリノーゲンと結合するこ
とで抗凝固活性,プラスミン,プラスミノーゲンと結
合することで抗線活性を発揮する.また,死細胞,
Heme,LPS の生体に不な細胞や,性を発揮す
る物質と結合し,その除去や中を助ける
4,5)
.さら
に,瘍敗血症モデルにおいて HRG は瘍局所で病
原体の殺菌にくことが報告されている
6)
.
以上の知見より, HRG は敗血症時に制御不全に陥る
と考えられる凝固・線系や炎症・免疫系の制御に重
な役割を担っていることが示唆される.しかしなが
ら,敗血症時の循環血液中の HRG の役割についての
詳細は明らかとなっていない.その為,本研究では,
敗血症における循環血液中 HRG の役割と,HRG が敗
血症治となる可性について検を行った.
和 氣 秀 徳
Hidenori Wake
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学
Department of Pharmacology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and
Pharmaceutical Sciences
岡山医学会雑誌 第130巻 December 2018, pp. 113-115 平成29年度岡山医学会賞紹介記事
総合研究奨励賞(結城賞)
昭和53年生まれ
平成15年 3 月 岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻卒業
平成15年 4 月 岡山大学大学院医歯学総合研究科修士課程入学
平成17年 3 月 岡山大学大学院医歯学総合研究科修士課程修了
平成17年 4 月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程入学
平成21年 9 月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程修了
平成21年 9 月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学 非常勤研究員
平成21年11月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学 助教
平成29年 9 月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学 講師
現在に至る
<プ ロ フ ィ ー ル>
Wake H, Mori S, Liu K, Morioka Y, Teshigawara K, Sakaguchi M, Kuroda K, Gao Y, Takahashi H, Ohtsuka A, Yoshino T,
Morimatsu H, Nishibori M : Histidine-Rich Glycoprotein Prevents Septic Lethality through Regulation of Immunothrombosis
and Inflammation. EBioMedicine (2016) 9, 180-194.
受 賞 対 象 論 文