震災後の海域における環境調査と海洋 GIS による解析 笠谷貴史、山北剛久、山本啓之、北里洋 (海洋研究開発機構) Habitat mapping approach to assess the tsunami impact on the ecosystem of offshore the Tohoku district. Takafumi Kasaya, Takehisa Yamakita, Hiroyuki Yamamoto, Hiroshi Kitazato (JAMSTEC) 東北マリンサイエンス拠点形成事業は、東北地方太平洋沖地震と津波が 三陸海域の海洋生態系に与えた影響と変動過程を調査研究し、漁業復興に 寄与することを目標にしている。海洋研究開発機構では、沖合底層を中心 に海域環境、海底地形、底質、生物組成と分布、食物連鎖構造,震災がれ きの分布と分解過程等の観測データを GIS(地理情報システム)により統 合し、対象海域の生態系を構成する要素間の相関性と変動傾向を分析する。 分析結果をもとに生態系の時空間変動を解析し、地震後の海洋生態系の現 状評価と変動予測について研究を進める。さまざまなデータは,ハビタッ トマップ(Habitat Map)に統合して海域における震災後の変化を可視化す る。図 1 はデータ統合の概念図である。このマップは、海洋環境の保全や 漁場管理における情報分析ツールとして利用できる。既に、沿岸から深海 底での海洋環境において音響データと生物情報とを統合した解析事例があ (たとえば Brown et al., 2011; Huang et al., 2011) 今回の事業では、長期間(10 年)にわたる定期調査が陸沿岸沖合にか けて実施され、収集したデータはデータベースに保存し公開される。この 広域かつ長期の海洋生態系調査にて収集されたデータセットは、巨大イン パクトに対し海洋生態系がどのように変動するのかを見いだすための優れ た研究資産になるが、それにハビタットマップでの情報公開が漁業復興の みならず海洋環境の保全策につながると考える。 本事業最初の調査航海が、20123月にR/Vみらいを用いて実施され、 12kHzの測深器による水深250m以深での海底地形、曳航体によるカメラ観 察と微地形データ、CTD、マルチプルコアラーによる堆積物・生物採取など が種々の観測が実施された。まずはこれらの情報を図1の様にデータ統合・ 集積したマップを作成して現状を把握し、情報分析ツールとして今後の観測 やサンプリングの計画の最適化にも利用する予定である。 [引用文献] Craig J. Brown, Stephen J. Smith, Peter Lawton, John T. Anderson (2011), Benthic habitat mapping: A review of progress towards improved understanding of the spatial ecology of the seafloor using acoustic techniques. Estuarine, Coastal and Shelf Science, 92, 502-520. Zhi Huang, BrendanP.Brooke,PeterT.Harris (2011), A new approach to mapping marine benthic habitats using physical environmental data. Continental ShelfResearch3:1S4–S16 1 調査により収集されている情報によるデータ統合の概念図