就業場面における促進焦点・防止焦点
-法測定立的ネットワークと職種による違いの検討-
○神長伸幸
1
・山田裕生
1#
・鹿内学
1#
(
1
ミイダス株式会社 HR サイエンス研究所)
キーワード:制御焦点理論,職業制御焦点尺度
Individual differences of promotional and preventive focus in work situations
A nomological network approach and job type differences
Nobuyuki Jincho
1
Hiroki Yamada
1
and Manabu Shikauchi
1
(
1
MIIDAS CO., LTD. HR Science Institute)
Key Words: Regulatory focus theory, Work Regulatory Focus Questionnaire
目 的
制御焦点理論は,促進焦点と防止焦点という 2 種の特性や
状態を用いて動機づけを捉える理論である(Higgins,1997).
一般的な制御焦点を測定する促進予防焦点尺度邦訳版(PPFS,
尾崎・唐沢, 2011)を用いた研究では,両特性を測定するこ
とで効果的な教育的介入に繋がることが示されている(e.g.,
外山他, 2017).ビジネス場面においても,動機づけが高いパ
フォーマンスにつながることを示唆する考察があるが(安永,
2014),動機づけの個人差という観点からの検討が重要である
と考えられる.
本研究では,就業場面に即した制御焦点を測定する尺度
(WRFQ)を作成し,職種による動機づけの適性について検討
することを目的とした.本論では,心理指標を用いて法則定
立的ネットワークを検証し,職種による差異を検討した.
方 法
実実験験参参加加者者おおよよびび調調査査方方法法
GMO リサーチ株式会社が提供する Japan Cloud Panel の全
国モニタから抽出された 20 代から 40 代を対象に,セルフリ
ポート形式での WEB 調査を実施した.調査 1 では,欠損値の
無い 668 名(男性 349 名,女性 319 名,36.26±7.98 歳,有
効解答率 88.4%),調査 2 では 577 名(男性 273名,女性 304
名,35.28±7.68 歳,有効解答率 99.6%)を分析の対象とした.
調調査査内内容容
調調査査 11 既存の制御焦点研究を概観し,職業場面における促
進焦点および防止焦点を測定する項目をそれぞれ 21 項目作
成し,6 件法にて回答を求めた.回答データをもとに,固有
値および解釈可能性から因子数を決定し,主因子法プロマッ
クス回転による探索的因子分析を実施した.その後,因子負
荷量,共通性,解釈可能性をもとに項目を選定した.
調調査査 22 調査 1 で作成した WRFQ 計 18 項目,PPFS の利得接近
志向尺度・損失回避志向尺度計 16 項目,行動抑制システム・
行動接近システム尺度(安田・佐藤, 2002)から接近ドライ
ブと回避ドライブ計 9 項目,自己目標志向性尺度(小平, 2001)
15項目,ローゼンバーグ自尊感情尺度邦訳版(桜井, 2000)
10 項目,性別,職種,役職,年収,学歴について回答を求め
た.回答データについて(A)尺度間相関を算出し,(B)職種
間の職業制御焦点の平均値を比較するため,Kruskal-Wallis
検定と Tukey 法による多重比較を実施した.
結 果
調調査査 11 二因子解の探索的因子分析を実施した.抽出された
第一因子 9 項目(α=.86)を職業促進焦点(e.g., 「会社の
ビジョンや目標についてよく考える」「仕事で将来やり遂げた
いことがある」),第二因子 9 項目(α=.91)を職業防止焦点
(e.g.,「一度任せられた業務は自分でやり切るべきである」
「仕事ではルールや規則の遵守を重視する」)とした.
調調査査 22((AA)) 尺度間相関を表 1 に示す.職業促進焦点尺度は,
職業防止焦点尺度(r = .34),利得接近志向尺度(r = .67)
および接近ドライブ(r = .39)との間に正の相関を示した.
職業防止焦点尺度は損失回避志向尺度(r = .51)および BIS
(r = .28)と正の相関を示した(全て p < .01).
調調査査 22((BB)) Kruskal-Wallis 検定の結果,職業促進焦点では
有意な差が確認され(χ
2
=17.76, df = 4),営業系職種が販
売・サービス系および技術系職種よりも高かった(p < .05).
考 察
本研究では,18 項目の WRFQ を作成し,信頼性および妥当
性を検討した.職業促進焦点尺度・職業防止焦点尺度共に類
似する概念と正の相関関係を示し,WRFQ の収束的妥当性を示
している.また,利得(損失)に着目する職業促進焦点(職
業防止焦点)と動機づけの源泉が異なる概念との関係性は弱
く,弁別的妥当性を示したことから,WRFQ の構成概念妥当性
が検証されたと考えられる.
また,PPFS と比較して,WRFQの促進焦点尺度と防止焦点尺
度の相関が弱く,防止焦点尺度と接近ドライブではより弱い
相関を示している.就業場面に限定することで,より高い弁
別的妥当性を持つ尺度が作成されたと考えられる.
営業系職種が販売・サービス系および技術系職種よりも促
進焦点が高いことは,職種によって動機づけの適性が異なる
ことを示唆している.今後,年収や役職などを考慮し,職種
による動機づけ適性をさらに検討したい.
引用文献
Higgins, E. T. (1997). American psychologist, 52(12),
1280-1300.
小平 (2001). 名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要,
48, 283-289.
尾崎・唐沢 (2011).心理学研究, 82(5), 450-458.
桜井 (2000). 筑波大学発達臨床心理学研究, 12, 65-71.
外山・長峯・湯・三和・黒住・相川 (2017).教育心理学研究,
65(4), 477-488.
安田・佐藤 (2002).心理学研究, 73(3), 234-242.
安永 (2014). 労働政策研究・研修機構, 135-154.
表 1 尺度間相関ならびに信頼性係数
職業促進焦点
職業防止焦点 .34
**
利得接近志向 .67
**
.36
**
損失回避志向 .39
**
.51
**
.54
**
接近ドライブ .39
**
.10
*
.46
**
.24
**
回避ドライブ -.12
**
.28
**
0 .37
**
.18
**
*p < .05, **p < .01
WRFQ
PPFS
BIS/BAS
-
-
-
-
-
-
損失回避志向 接近ドライブ 回避ドライブ
WRFQ PPFS BIS/BAS
職業促進焦点 職業防止焦点 利得接近志向
α=.93 α=.87 α=.88 α=.85 α=.81 α=.83
3AM-063-PM 日本心理学会第86回大会
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