保育者養成課程における歌唱指導については)
~発声法の重要性~
はじめに
現在,保育者養成課程を設置している大学,
短期大学は多い。また,幼・保一元化がささや
かれ,保育者養成課程の講義には,教育と保育
を共存させ,より高度な講義内容を盛り込み,
カリキュラムが過密になっている。あまりに過
密なカリヰュラムの中にあって,人として自然
に,自由に「表現」するという基本的な行為が
忘れ置かれているように思う。保育者にとって
「表現方法」のーっとして挙げられるのは,
「声」を使用することであろう。保育者の一日
の仕事を考えるとほぼ絶え間なく「声」を使用
している。保育者という職業はまさに「声」を
酷使する職業といえる。しかし保育者養成課程
の音楽関係の授業の現状は,大学・短期大学進
学前に音楽実技経験の全く無いものも多く,ピ
アノを弾くということに時間がかかりすぎて
「声Jを「表現方法」とする職業に就くことが
分かっていながら, I発声」という土台作りに
かける時間を取ることがほとんど出来ない。保
育者は就職するとすぐに「読み聞かせをする J,
「子どもに歌って聞かせる j もしくは, I弾き
歌い」をしなければならない。「声」を出す準
備運動である「発声法」の最低限の知識を持っ
ておかないと,自分の「声」の異常に気づくこ
となく,取り返しのつかない状態になることも
考えられる。「声」は自分の一つしかない「身
体j と言う楽器を使用しているということは決
して忘れてはならない。また,子どもたちが間
違った「発声」で声を発した場合,矯正の対策
が立てられないばかりか,誤った方向へと導き
かねない c I声Jを発し歌を歌うという行為は
ガハプカ 奈美
(短期大学部初等教育学科)
人の最も身近な表現方法である。(1)
本稿では.1発声法」の重要性を探り,保育者・
教育者たちが,より自然で,自由に「声Jを発
することができるように,事例やトレーニング
例を挙げて,保育者養成課程の音楽学習の講義
で実効をあげるための方策について報告する。
1.歌唱指導時の問題
多くの子どもたちは声を出し遊び,歌うこと
を好む。子どもたちが好むことを保育者は的確
に見極め環境を与えていかねばならない。しか
し歌唱指導において, Iもっと大きな声で歌い
ましょう J,Iもっと元気に歌いましょう Jなど
という保育者の言葉しか耳に入ってこない。一
体, Iもっと大きな声で歌う Jとはどうしたら
良いのだろう。また, Iもっと元気に」とはど
のように歌唱すれば「元気に」なのであろう。
大人の私達でさえどのようにしたら良いかわか
らないような声掛けしか出来ていないのが現状
である。ここで,なぜ暖昧な言葉でしか指導が
行えないかは明らかである。それは,保育者が
学生時代に「発声」について学ぶ機会が無かっ
たため,子ども達の声の矯正の仕方がわからな
いのである。では,歌唱指導の声かけに関して
どのような解決法があるか具体例を挙げたい。
事例 1: 10人のクラス (6歳児)に英語の
導入歌として {ABCの歌〉を歌唱指導し
た。この際に「もっと元気に歌いましょう」
と指導したところ, 10人全員が立ち上がり
怒鳴り声で歌い始めた。
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