◎連載
研究生活のためのインフォマティクス 【第 1 回】
ポケットひとつの原則—ファイルは手ぶらで運ぶもの
轟 眞市 物質・材料研究機構 光材料センター
*
Shin-ichi TODOROKI
USB メモリやノートパソコンを紛失してしまい、
「記録されていた個人情報が流出する恐れあり」と、
責任者が謝罪する事件を目にするたび、あの仕組み
を導入しておいて本当に良かった、と実感する。ネッ
トから侵入してくるウイルス等の脅威もさることな
がら、情報を管理する側の人間に完璧を期待できな
い現実にも対処すべきである。
また、裁量労働制や在宅勤務の導入で、場所にと
らわれない働き方が可能になってきた研究者は、ど
うすれば効率的なファイル管理ができるのであろう
か。本稿では筆者が講じている対処法を紹介する。
特殊な方法に見えるかもしれないが、その裏に流れ
る哲学を感じていただけたらと思う。
わかっちゃいるけど、、、
なぜ、USB メモリやノートパソコンを持ち歩かな
ければならないのか?外回りでそれらが必要である
なら仕方がない。でももし、職場と自宅で同じファ
イルやソフトが必要、という理由だけなのであれば、
他にもっとやり様がある。ネットワーク経由で運べ
ば良いのだ。
例えば自分宛てのメールに必要なファイルを添付
する。あるいは、オンラインストレージ
†
を利用する。
でも、たくさんのファイルを参照する必要があるし、
いちいち選んでいられない。急いでいる時はうっか
り転送し忘れることもある。
そう、必要な作業をするのにいちいち手間がかか
*
〒 305-0044 茨城県つくば市並木 1-1
fax 029-854-9060
URL: http://www.geocities.jp/tokyo 1406/
†
サーバの空き領域を借り受け、ユーザがインターネット経由
でそこにデータを保存できるようにするサービスのこと。
Office
Lab.
Internet
LAN
Home
Firewall
Rental server
図 1: ネットワーク構造
ると、それが億劫になって、結局望ましくない安易
な方法 (この場合はファイルや PC の持ち出し) に走っ
てしまうのが人間だ。でも、安易な選択をして自ら
に常に完璧な物品管理を課すよりも、パソコンに完
璧な作業をやらせる方が遥かに気が楽である。手を
抜けずに常に努力を強いられる位なら、手を抜くた
めの努力をする方が良い。
単純にすればコトは容易
解決策は単純なものが一番良い。職場や自宅のど
の PC を立ち上げても、同じファイルが見えるように
すれば良い。席を離れるときにコマンドを打ち、別
のパソコンを立ち上げたらまたコマンドを打つ。あ
とはパソコンが自動的に最新のファイルに上書きし
てくれる。移動させるべきファイルを指定する必要
はなく、勝手にパソコンが選んでくれる。その様な
プログラムを自作した。
これを導入して以来、どこで仕事をしようとも、仮
想的に同じパソコンを使っている状態となった。「情
報を保存する場所は一ヶ所にまとめるべし」という
ポケットひとつの原則 [1] にもかなうやり方だ。
68 マテリアルインテグレーション Vol.21 No.10 (2008)