はじめに データ 推定方法 推定結果 スポーツ活動関連変数の内生性の検定 おわりに はじめに スポーツの活動歴がある従業員はそうでない 従業員よりも早く昇進するのであろうか。 言い換 えると, スポーツ活動による昇進プレミアムはあ るのだろうか。 一見, スポーツと昇進との間には 直接的な関係があるようには思えないかもしれな い。 しかし, スポーツ活動を通じて苦しい練習に 耐えてきた従業員は, 忍耐力があり, 根性があり, また協調性や職場を引っ張る統率力があると思わ れる。 これらの要素は企業活動をする上で非常に 重要である。 例えば, Heckmam, Stixrud and Urzua (2006) では, やる気や協調性などの非認 知能力が労働市場における成功に大きく影響して いることを実証的に明らかにしている。 スポーツ 活動による人的資本投資が労働生産性を上昇させ ると考えられる。 また, スポーツ活動をしている 従業員ほど健康的で体力もあることから健康的人 的資本に多く投資しており, 生産性の向上につな がるとも考えられる。 人的資本投資の観点からだ けでなく, スポーツ活動を通じた適度な気分転換 が労働生産性を上昇させる可能性もある。 その反 対に, スポーツ活動にあまりにも力を入れすぎて No. 587/June 2009 62 本稿では, 自動車メーカー X 社の従業員を対象にしたアンケート調査から高卒と大卒の従 業員に分けて昇進決定モデルを推定し, スポーツ活動による昇進プレミアムがあるかを検証 する。 推定結果によると, 高卒従業員の場合, スポーツ活動した (している) 従業員の方が そうでない従業員よりも昇進しやすいことがわかった。 また, 経験した (している) スポー ツが団体競技か個人競技かで昇進プレミアムが異なることもわかった。 しかし, 大卒従業員 では, 昇進プレミアムは観察されなかった。 この企業は高卒従業員に対しては, スポーツで 培った根性, 忍耐力, 協調性や統率力, またスポーツを通じて得た健康面や体力面での人的 資本が活かせるような仕事を割り当てていると考えられる。 そのため, スポーツ活動歴のあ る高卒従業員は昇進しやすいと考えられる。 しかし, 企業は大卒従業員に対してはまた別の 能力 (学問的能力など) を重要視し, 職務遂行するのにそれが必要な仕事に就かせていると 推測できる。 したがって, 大卒従業員においてはスポーツ活動から得た根性・忍耐力や協調 性・統率力は職務遂行上あまり必要ではないと考えられる。 【キーワード】 労働経済, 教育訓練政策, 人事労務一般 ●論文 (投稿) スポーツ活動と昇進 大竹 文雄 (大阪大学教授) 佐々木 (大阪大学准教授)