1. 序論 2012 年4 月3 ~4 日にかけて,低気圧が急速に発達しな がら日本海を西から東に横断した(以下低気圧と表記, 図-1).この低気圧は,3 日の21 時に964hPa となり,黄海 上に存在していた 2 日 21 時の中心気圧 1006hPa に比べ, 24 時間で42hPa も低下し,台風並の強さに発達した(気 象庁, 2012).この気圧低下量は,日本海で発達する低気 圧では非常に大きな変化であり,この低気圧は,アメダ ス観測地点の889 地点中75 地点で観測史上1位,また日 本海北部において観測史上最大波高を記録するなど, 様々な被害を日本海の沿岸部にもたらした. 一般に,波浪の設計条件や災害の評価では,エネルギ ー波高に相当する有義波高 H 1/3 と最高波高 H max の両者の 推計が重要であるが,その取り扱いの難しさから H 1/3 の みが被災の事後評価や設計に用いられる.一方,近年の 研究により,Freak wave 等の最大波の発生確率を予測す る理論的枠組みが構築され,水槽実験およびNLS 方程式 やZakharov 方程式を用いた数値計算で精度の確認が行わ れている(例えば,Mori ら, 2006; 2011). 定常場に対する理論では,Freak wave やH max の出現頻 度は,波形勾配ak,周波数スペクトル幅 δ ω ,方向分散幅 δ θ を用いて,水面変位の kurtosis を予測し,波列の長さ からH max の頻度や期待値を求めるという方法が提案され ている(Mori ら, 2011).しかし,実際の気象条件下でど のように極大波が発生しているのかという研究は少な く,その出現特性は把握されていない( Dysthe ら , 2008 ;Casas-Prat ・Holthuijsen, 2010).また,スペクトル 型波浪モデルでは,非線形相互作用項S nl において風波と うねりの共存場の取り扱いが難しく,外洋における観測 とモデルによる検証が進まないという現状がある. 本研究では,日本海北部で観測史上最大を記録した 2012 年4 月の日本海低気圧を対象に,観測データの解析 を系統的に実施し,暴波浪時における波浪の非線形特性 を明らかにする.さらに,波浪モデルによる追算を行い, 再現性を検証する.最後に,非線形短期統計理論にもと 土木学会論文集 B2(海岸工学) Vol. 69,No. 2,2013,I_126-I_130 2012 年 4 月 3 ~ 4 日に日本海で急発達した低気圧による暴波浪特性 Extreme Wave Characteristics due to Rapidly Developed Winter Storm Crossed the Sea of Japan in April 2012 森 信人 1 ・高木友典 2 ・川口浩二 3 ・加島寛章 4 ・間瀬 肇 5 ・安田誠宏 6 ・島田広昭 7 Nobuhito MORI, Yusuke TAKAGI, Koji KAWAGUCHI, Hiroaki KASHIMA Hajime MASE, Tomohiro YASUDA and Hiroaki SHIMADA The strong winter storm crossed from the west to east of the Sea of Japan developing rapidly in early April, 2012. The minimum pressure of the winter storm reached 964 hPa at 21:00 on 3rd April. The storm generated wind waves more than 10 m in the significant wave height and gave severe damages to coastal structures. This study analyzed observed wave records at 12 stations along the Sea of Japan. A series of numerical analysis was performed to understand the characteristics of extreme wave sea condition. The maximum wave heights were estimated based on the spectral wave model and nonlinear short wave statistical theory. The estimated maximum wave heights by the nonlinear theory show better agreement with the observed peaks of maximum wave height than that by the linear theory. 1 正会員 博(工) 京都大学准教授 防災研究所 2 学生会員 関西大学大学院 理工学研究科 3 正会員 博(工) 港湾空港技術研究所 海象情報研究チーム 4 正会員 修(工) 港湾空港技術研究所 波浪研究チーム 5 正会員 工博 京都大学教授 防災研究所 6 正会員 博(工) 京都大学助教 防災研究所 7 正会員 博(工) 関西大学准教授 環境都市工学部 図-1 2012 年4 月3 ~4 日に日本海を通過した低気圧の概要と 解析対象とした波浪観測地点の関係(気象研資料を元 にリサンプリング,実線:低気圧の中心位置, ● :観測 点)