青山地球社会共生論集 創刊号,2016 年 5 月
© Aoyama Gakuin University Society of Global Studies and Collaboration, 2016
「トランプ現象」とラディカル・ポリティクス
会 田 弘 継
1. 現象の文脈
2016 年の米大統領選を前にした民主・共和両党の大統領候補指名争いは、
2015 年後半の前哨戦から近年にない混迷ぶりを見せ、本稿執筆時(2016 年1
月中旬)にまで至っている。特に大統領ポスト奪還を狙う共和党側は立候補者
が乱立
1)
、事前の想定では最有力候補とされていたジェブ・ブッシュ元フロリ
ダ州知事が振るわず、党主流派とは無縁といってよい不動産王ドナルド・トラ
ンプが予想もされなかったダントツの支持率を得た。人気は一時的と見る選挙
分析プロらの予想を覆し、同氏 2016 年 2 月からの州ごとの予備選挙・党員集
会開始時点まで他候補を大きく引き離しトップ支持率を維持し続けた
2)
。
各州の予備選挙などが始まるまでの約半年、トランプは出馬宣言でメキシコ
移民に「レイピスト(強姦犯)」がいると訴え、米墨国境に「万里の長城」の
ような壁の設置を求めたのをはじめ
3)
、12 月のカリフォルニア州でのイスラ
ム過激派夫婦による銃乱射事件(14 人死亡)を受け、イスラム教徒の全面入
国禁止を呼びかけるなど過激な発言を繰り返した。こうした発言は米国内だけ
でなく、国際的にも物議をかもした
4)
。移民問題だけに限らず、ふつうなら政
治生命を失うような暴言も度重なり、リベラル保守を問わずメディアから厳し
い批判を受けたが、トランプへの高い支持は一向に衰えなかった。
「トランプ現象」とでも呼ぶほかはないこの事態の背景は何なのか。本稿で
はまず、現代アメリカ政治・社会の文脈で分析を試みる。またアメリカ政治(思