〈論 文〉
ハリントンの統治機構論に対するジョン・ミルトンの批判⑵
──17世紀イングランド共和主義思想の統一性と多様性の一側面──
竹澤祐丈
Ⅰ はじめに
Ⅱ 共和国体制の動揺とその崩壊
1 時代の流れ
2 共和政体論の多様性
3 『設立論』の出版と改訂
Ⅲ 『設立論』における様々な処方箋の混在
1 テクストの時論的性格
2 共和政体論の前提としてのハリントン
3 ミルトンの原理的認識:正義と良心に基づく共和政と異教的伝統に基づく君主政(以上,第187巻第4号)
Ⅳ ミルトンによる共和政の構想
1 選挙への影響力の行使
2 平等性なき共和政モデルとその安定性の確保
3 官職交代制について
4 二院制批判
5 地方議会の提案(以上,本号)
Ⅴ 共和政の必要性とその担い手
Ⅵ まとめにかえて:18世紀の共和主義的議論への展望
Ⅳ ミルトンによる共和政の構想
「異教的」な君主政に対照される形でミルト
ンによって示された共和政は,具体的にどのよ
うな制度構想を内包するのであろうか。本章で
は,ミルトンの共和政モデルは,ハリントンの
共和政モデルの安定性を背後で支えるものとし
て重視されている平等性に言及することなく安
定性を確保する試み,厳密には,ハリントンの
共和政モデルが持つ(ミルトンから見ての)不
安定性の除去,であることを明らかにする。す
なわちハリントンのモデルを前提に,三つの修
正─一院制で終身制議員からなる中央議会制,
地方議会の設置,土地の再分配を規定する法の
不要─を主張するのも,その観点からの提案と
解すべきなのである
1)
。第1節では,ミルトン
の構想が,具体的な選挙における投票行動への
影響を与えることを狙いとした含意に再度言及
し,第2節以下では,ミルトンにおける共和政
の具体的構想が,政体としての安定性を重要原
理として設計されている点を確認する。すなわ
ち本章の議論は全体として,安定性の確保を第
一原理とする具体的な制度構想を示したという
経済論叢(京都大学)第188巻第1号,2014年2月
1)これらのハリントンの共和政論に対するミルトン
の留保と,ハリントンに対するヒュームの留保の要
点が非常に類似している意味について,本稿第Ⅵ章
において簡潔に再論する。