1. はじめに (1) 研究の背景 近年,グリーンインフラストラクチャー( Green Infrastructure 以下, GI )に関する議論や社会実装が進み GI を骨格とした都市再 生・再整備への期待が高まっている。欧州では, 2013 年に欧州委 員会が GI 推進を打ち出し, EU GI 定義として,多様な生態系 サービスを享受するためデザイン・管理されている自然環境・半 自然環境エリア及びその他の環境要素をつなぐ戦略的に考えられ たネットワークを指す 1) ものとした。米国では連邦環境保護庁 Environmental Protection Agency,以下 EPA)が中心となり, 排水・治水等の単一機能のみを有するグレーインフラの代替・補 完として,緑地や土壌の持つ雨水の浸透・ 貯留機能や植物の蒸発 散機能など,持続的雨水管理を核とした GI を定義づけている 2) EPA は, GI の推進において 16 の自治体とパートナーシップ(協 定)を締結しているが 20) ,特にワシントン DC とフィラデルフィ アの 2 都市については,包括的な協定を結び, GI 計画・実装が展 開されている 15) 一方,日本における GI の展開として,国レベルでは国土交通省 の国土形成計画,第 4 次社会資本整備重点計画,環境省の生態系 を活用した防災・減災に関する考え方,内閣府の気候変動の影響 への適応計画など,グレーインフラを補完し,防減災機能に加え て持続可能な都市・地域づくりを担う GI への期待が寄せられてい る。 2019 年には国土交通省からグリーンインフラ推進戦略 3) が公 表され, GI の活用を推進すべき場面や GI を推進するための方策 など大きな戦略がまとめられた。基礎自治体レベルの GI 計画とし ては, 2018 年の 横浜 市中期 4 年計画や下水 道事業 中期 経営 画, 年に策定された 世田谷区 動計画などが GI 導入検討 つ進 でいる。 しかしながら,日本では国レベルの戦略と基礎自治体レベルで 展開される GI 計画や 策, 地ス ールで展開されるプ ロジェ トが個別に進するという課題る。のため,部局間での基 本的な戦略の 有と計画の連動, 組織 制度 など GI 実装に けた 策展開の 仕組 みといった 点から,戦略的 16) 枠組 みを する とが められる。 (2) 本研究の位置付けと目的 研究 では,都市ス ールで GI 計画を実 するための戦略的な 枠組 みの 構築 けた 知見 とを 的とし, EPA と包括的 な協定を結び, 進的な GI 計画を展開するフィラデルフィア市を 対象 に, GI 計画の展開と実装推進に けた 仕組 みを整理した で, GI 計画実装のための 枠組 みとしての特 らかにする。 都市ス ールの GI 推進戦略に関しては, 国リ プール市を とした 下・ GI 計画 手法 に関する 研究 4) や,中 星野 るデン ーク・ コペ ン市の GI 計画の展開プ ロセ スと実 行支援 に関する 研究 5) る。 れらは,欧州における計画 制度 策内を中心にしたものでる。米国の持続的雨水管理を中 心にした GI に関しては, 遠藤 のフィラデルフィアにおける雨水 出管理 策としての GI 計画に関する 研究 6) や, 福岡 ・加 ートラン 市における GI 適用策の展開に関する 研究 7) る。 遠藤 6) 研究 では,フィラデルフィアにおける GI 計画と推進 策として, 域を単 とした雨水 出の考え方と GI 導入 のプ との関 係性 下水 道局 GI 計画と推進 策としてのイ や実 証事業 を整理した で, 2010 年までの GI る雨水出の抑制目標状況課題を整理している。ここ 証事業 の実 たっての 課題 として あげ られたのが, GI 技術 の開発,庁内の推進体 づくり,近 隣住民 啓蒙 る。 で,本 研究 では, GI 計画の 修正版 が策定された 2011 年以 市における GI 展開について,国レベルの戦略をまえた GI 計画と庁内の他 部署 の計画における 位置付 けとの 応, 組織 制度 など GI 実装の 仕組 みに 着目 し, GI 実装の 枠組 みとして のその実態と特 分析 する点に 新規性 る。 * 東京農業地域環境科学部 ** 都大学東京都市環境学部 *** 岡山人材育 City of Philadelphia’s Framework towards Strategic Green Infrastructure Planning and Implementation 福岡 孝則 * 片桐 由希子 ** 加藤 禎久 *** Takanori FUKUOKA * Yukiko KATAGIRI ** Sadahisa KATO *** Abstract: This research aims to analyze the framework of green infrastructure (GI) plans and implementation in the City of Philadelphia, USA. Background of this research are challenges on creating a new type of holistic framework towards strategic GI planning and implementation. Research methods include a detailed literature review and interviews with the City of Philadelphia Water Department GI group, and consulting “Green City, Clean Waters (GCCW)” to understand the development and framework of GI planning. We identified three phases of GI planning and implementation by analyzing selected GI plans in relation to EPA GI planning and policy. In addition, we created a map and charts showing GI implementation in the City. Research results are as follows. First, this research clarified the development of GI planning in Philadelphia. In the timeframe, there are ‘Water quality control period’, ‘GI planning development period’ and ‘GI implementation acceleration period’; GCCW performed key roles in setting GI goals, visions and methods. In addition, GI partnership and the interaction between EPA and the City were confirmed. Second, Philadelphia’s GI planning to implementation framework with planning process, organizational structures, GI incentives and community engagement was revealed. Finally, through this research a holistic framework towards strategic GI planning and implementation was clarified. Keywords: green Infrastructure, sustainable stormwater management, implementation, Philadelphia キーワードグリーンインフラ,持続的雨水管理,実装,フィラデルフィア ■研究発表論文 673 ランドスケープ研究 83 (5),2020