JFE スチール株式会社 1)スチール研究所主任研究員
2)知多製所 商品技術部主任部員
3)知多製所 製部主任部員
17Cr Stainless Seamless OCTG ``UHP 17CR'' with High
Corrosion Resistance at High Temperature and at High CO
2
Pressure; Yasuhide Ishiguro, Takeshi Suzuki, Tetsu Nakahashi,
Kazutoshi Ishikawa and Hideo Sato (JFE Steel Corporation).
2012年10月31日受理
ま て り あ
Materia Japan
第52巻第 3 号(2013)
高温・高 CO
2
ガス環境で優れた耐食性を有する
シームレス17Cr ステンレス油井用鋼管 UHP 17CR
石 黒 康 英
1)
鈴 木 健 史
1)
中橋 哲
2)
石 川 和 俊
3)
佐 藤 秀 雄
2)
. は じ め に
世界的にエネルギー需要が増え,石油・天然ガスの開発
は,これまで以上に,深井戸化かつ酷化した腐食環境へ挑
戦する方向へ向かっている.シームレス油井管材料には,こ
うした使用環境に十分に対応できるよう期待されている.
具体的には,耐 CO
2
腐食に強い材料,および,H
2
S が含
まれた環境での耐 SSC 性を有し,高強度を有する材料が求
められている.もはや汎用的になってきた 13Cr マルテン
サイト系ステンレス(API 13Cr)では対応できない井戸も増
加し
(1)
,改良型 13Cr マルテンサイト系ステンレス(Mod
13Cr)
(2)(3)
でも使用に耐えない環境が目立つようになった.
その上位鋼種の,15Cr マルテンサイト系ステンレス鋼管
(UHP 15CR)も開発され,用され始めている
(4)
.
しかしながら,年々,腐食環境が厳しくなり,つまり,高
温,高 CO
2
分圧,高塩化物イオン濃度の条件が厳しくなる
条件下では,これらの材料でも十分に対応できない環境が増
えてきている.そのため,22Cr 以上の 2 相ステンレス,
Ni 基合金を提案せざるをえない状況も多くなっている.こ
れらの材料は,汎用的なシームレス圧延技術であるマンネン
マン穿孔法では製が困難であることが多い.また,マルテ
ンサイトを含まないため,110 ksi 級( YS758 MPa ~),
125 ksi 級(YS862 MPa~)強度を実現するには,焼入焼戻
プロセス(QT)では実現できず,冷牽(冷間にて外径縮径加工
および減肉・肉厚を均質化)して強度を増加させる必要があ
る.そのため,これらの材料の需要は限定されたものになっ
ている.
この解決策として,UHP 15CR よりも厳しい腐食環境
で使用可能なシームレス油井用鋼管の開発を目標に,耐食性
の向上を図り,冷牽なしでの 110 ksi 級,125 ksi 級の高強
度化を検討した.17Cr 成分を主とした材料開発により,
この両立を図ることに成功したので紹介する.
. 開発のコンセプト
UHP 15CR よりも苛酷な腐食環境で利用可能な鋼材が
必要となっており,この特性を凌駕すると共に,冷牽無しで
高強度化を実現するため,マルテンサイト主体の組織の作り
みが目標になる.具体的な開発ターゲットは以下のりで
ある.
YS≧110 ksi 級(≧758 MPa)
製方法冷牽なしで YS を実現する
(マンネスマン穿孔法,および QT プロセスで製可
能とする)
組織マルテンサイト主体の組織とする
高 CO
2
腐食での使用限界温度>200° C(CO
2
分圧
10 MPa)
耐 SSC 性pH 4~4.5(H
2
S 分圧 0.01 MPa)にて SSC
無し
本開発の課題は,UHP 15CR をもとに成分の最化を
図るとしても,従来の延長線上の成分設計を実質的に使えな
い点である.これまで実施してきた耐食性向上の手段は,製
性を確保しつつ,不動態皮膜の改良を図るに際し,Cr 当
量,Ni 当量も,共に増量してきた歴史に立っている.図
に示すように,このまま,Cr 当量,Ni 当量を増量すると,
SUS329J3L, J4L(順に 22Cr, 25Cr)のような 2 相ステンレス
鋼と同様に,焼入れ・焼戻しプロセス(以下では QT と略す)
では作りみができず,冷牽無しという目標が成しえない.
よって,図 1 の UHP 15CR に対して,新開発材 UHP
17CR では,右下向きの方向性を成分設計の主体とした.つ
まり,フェライト安定元素の Cr, Mo の増量を図って不動態
皮膜を安定させると共に,オーステナイト安定元素の Ni を
減量してオーステナイトが主体な組織にならないように工夫
した.一方で,耐 CO
2
腐食性および耐 SSC 性の低下は,W