【土木計画学研究 ・論文集Vol. 20 no. 4 2003年9月 自動車 ・鉄道の分担を考慮 したフレックスタイム制度下の最適通勤 ・始業時刻分布の分析* Optimal Commuting and Work Start Time Distributions under Flexible Work Hours System considering Modal Split between Automobile and Railroad* 吉村 充 功**・ 奥村 誠*** By Mitsunori YOSHIMURA**• Makoto OKUMURA*** 1. はじめに 近 年,通 勤 混雑 の緩 和 策 と して,交 通 需 要 管 理(TDM) 施 策 が 着 目 され て い る.中 でも通勤需要を時間的に分散 させ る施 策 の 有 効 性 が 確 か め られ,フ レックスタイム制 度 は 徐 々 に浸 透 しつ つ あ る1).フ レックスタイム制度の 評 価 をす る際 に は,混 雑の外部不経済性の緩和効果だけ に着 目す るの で は な く,労 働時間帯のずれによる業務活 動の効率低下,す なわち時間的集積の経済性への悪影響 を考 慮 す る必 要 が あ る.筆 者 らは これ まで,始 業時刻変 更による業務活動の効率低下の影響を考慮 した通勤 ・始 業時刻分布を分析できる理論モデルを構築 し,フ レック ス タイ ム 制度 の経 済 評 価 を行 っ た2),3).し か しなが ら,こ れらの分析では大都市圏中心部の通勤鉄道や地方都市の 自動 車 通 勤 を念 頭 に置 い た単 一 モ ー ドの 下 で の 分 析 に と どまってお り,自 動車と鉄道の機関分担が存在する場合 への直接的な適用ができない. さらに,最 近では渋滞 による環境問題,経 済損失の影響 が よ り深 刻化 してお り,交 通 需 要 を直 接 的 に制 御 で き,即 効性が期待できるロー ドプライシング施策の導入が日本 で も検 討 され て い る.ロ ー ドプ ライ シ ン グ施 策 の 有 効 性 は 高 く,今 後,重 要性 は さ らに 高 ま る と考 え られ るが,よ り効 果 を発 揮 す る た め に は時 間 毎 に異 な る混 雑 料 金 を 設 定 し,時 間的 に集 中す る交 通 需 要 を適 切 に誘 導 す る ピー ク ロー ドプ ライ シ ン グ の 実施 が 望 まれ る4).ま た,他 TDM施 策 と異な り,ロ ー ドプ ライシング,ピ ー クロー ド プライシング施策を導入 した場合には料金収入が発生す る.機 関分担が存在する下では,こ れ らの施策は 自モー ドの 交通 需 要 を時 間的 に 分散 させ る だ け で な く,他 モー ドへ の転 換 も促 す こ とが 予想 され る た め,料 金 収 入 を他 モー ドの交通サー ビス向上のために利用することも考え られ てい る5).言 い 換 えれ ば,料 金 収 入 を適 切 に配 分 し, 機 関分 担 を適 切 に制 御 で きれ ば,よ り最 適 な状 況 が 達 成 で き る と考 え られ る. 本研究では,以 上の視点に立ち,よ り効 果 が発 揮 で き る と考 え られ るフ レ ック ス タ イ ム 制度 と ピー ク ロー ドプ ライ シ ン グ施 策 を 組 み 合 わせ た施 策 を 考 え,自 動車と鉄 道の機関分担が存在する下での最適な通勤 ・始業時刻分 布 を分 析 で き る理 論 モ デ ル を構 築 す る.さ らに,各 種の 施策がなく一斉始業の基本ケースと比較することにより 機 関 分 担,効 用 が どの よ うに 変化 す る か を分 析 し,フ レ ッ ク ス タイ ム制 度 と ピー ク ロー ドプ ライ シ ン グ施 策 を組 み 合わせた施策の効果を明らかにする. 2. 自動 車 ・鉄 道 通 勤 の 問 題 と理 論研 究 の概 要 (1) 既往の理論研究の概要 自動 車 通 勤 の 出発 時 刻 分布 に 関す る先 駆 的 な研 究 はVi- ckreyに よ って な され た6). Vickreyは 旅 行 費用 と して, 混 雑 に よ る不 効 用 と,通 勤 開 始 時刻 と実 際 の到 着 時刻 の ズ レに よ る不 効 用 を 考 慮 しな が ら,通 勤者 の 出発 時刻 を 決 定 す る と い う分 析 を 行 い,こ の 出発 時刻 選択 問題 を通 して時間的に変動する混雑料金について分析を行った. Arnottら は この考 え を発 展 させ,特 定の時間帯に混雑料 金 を課 した場 合 の 効 果 に つ い て 分 析 して い る7).越 は時 差始業や混雑料金による混雑緩和効果について帰宅時を 含 め た研 究 を行 い,ボ トルネ ック(以 下,BNと 略 す)の 容量制約による混雑の発生と混雑軽減のための方策を明 らか に して い る8).以 上 の研 究 は,ボ トル ネ ッ ク混雑 問 題 を扱 う理 論 的 な 方 法 を 提 供 して お り,本 研究も大いに 参 考 に して い るが,い ずれも始業時刻分布を与件として 扱っているため,始 業時刻選択による混雑への影響を考 慮 で き な い.赤 松 らは,こ の 点 を 改 良 し,始 業時刻選択 に関する動的な均衡条件を基に通勤不効用を最小にする 始 業 時刻 分 布 を導 出 して い る9).し か し,始 業時刻の変 更による業務効率の影響については考慮できていない. フ レ ック ス タイ ム制 度 に 関 連 して,労 働時間帯の重な りの重要 さを表す 「時間的集積の経 済性」の効果 を初めて 言 及 したの はHendersonで あ る.Hendersonは,都 お い て1つ の企 業 のみ が 存 在 す る と仮 定 し,フ レックス タイム制下での通勤者の通勤時刻選択行動を分析し,時 キ ー ワー ズ:TDM,交 通 管 理,交 通 手 段 選 択,公 共交通 運用 正 会 員,博(工),日 本 文理 大学 工 学部 建設都 市工 学科 (〒870-0397大 分 市 一 木1727, TEL: 097-524-2611, E-mail: yoshimuramt@nbu.ac.jp) 正 会 員,博(工),広 島 大学大 学院 工学研 究科 (〒739-8527東 広 島 市 鏡 山1-4-1, TEL & FAX: 0824-24-7827, E-mail: mokmr@hiroshima-u.ac.jp) 90 3