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【土木学会論文集 第422号/I-14 1990年10月 】
結晶塑性モデルによる亀裂先端近傍の弾塑性解析
ELASTO-PLASTIC ANALYSIS OF A BLUNTING
CRACK TIP IN CRYSTALLINE SOLIDS
小 畑 誠*・ 奥 田 純 三**・ 後:藤 芳 顯***・松 浦 聖****
By Makoto IBATA, Junzo OKUDA, Yoshiaki GOTO and Sei MATsu
Large elasto-plastic deformation around a blunting crack tip is analyzed with help of the
theory of physically based crystal plasticity. A boundary value problem is formulated by use
of boundary layer analysis under the condition of small scale yielding. The results are
compared with those predicted by the usual macroscopic (J2) plasticity. It is shown that
deformation tends to localize when crystal plasticity is used. The effects of microstructures
on the ductile crack growth are also discussed.
Keywords: crystal plasticity, large elasto-plastic deformations, crack tip
1. は じめ に
構 造 部 材 中 に存 在 す る亀裂 は, 構 造 物 の耐 荷 力 と寿命
を著 し く低 下 させ る こ とか ら,亀裂 の発 生 と進 展 の機 構
を解 明 す るこ とは, 工 学 に お け る重 要 な 問題 と して認 識
され,過去数十年に 多大 の進 歩 を得 て きた. こ の結 果,
金属材料における亀裂の問題 の多 くは, 応 力拡 大 係数 や
それ に対 応 した工 学 的 パ ラ メー ター で あ る破 壊 靭 性 値 を
も って議 論 で きる こ とが 明 らか に な り,現在 で は この 手
法 は金 属 材料 に とど ま らず よ り幅 広 い種 類 の材 料 に対 し
応用 され つ つ あ る. しか しながら,応力拡大係数や破壊
靭 性値 とい った 巨視 的 なパ ラ メー ター と亀裂 の先 端 近 傍
での 亀裂 進 展 そ の ものの 微視 的 な メ カニ ズム との関 連 に
つ いて は, 不 明 な点 が あ り今 な お数 多 くの 研 究 が続 け ら
れて い る.
これ ま で行 わ れ た 多 くの 実 験 的研 究 に よ り,鋼 材 中の
亀裂 の延 性 的 な 進展 の微 視 メカ ニ ズ ム につ い て は, 亀裂
の 先端 近 傍 で大 きな塑 性 変 形 が起 き, そ れ に よ り鋼 材 に
あ らか じめ 含 まれ る大 小 の 不純 物, 介 在 物 か ら発生す る
空隙が不安定的につながる形で亀裂が進展していくこと
が知 られ て い る1),2). この ように亀裂の進展は不純物や介
在 物 か らの空 隙 の発 生 と成 長, 不 安 定 的 な ひ ずみ 集 中化
な どが, 複 雑 に か らみ あ った微 視 的 な破壊 の進 行 現 象 で
あ り,それ は亀裂 先 端 近 傍 に起 きる塑 性 変形 の大 きな領
域で起こっている.そのため,初期の破壊進行のメカニ
ズム の研 究 では, 亀裂 先 端 近傍 で の塑 性 変形 に よ るひ ず
み の分 布 を記 述 す る試 みが な され, 全 ひ ず み塑 性 理論 に
基づ きい わ ゆ るHRR解 な どが 与 え られ た3),4). 不純 物
や, 空 隙 の果 たす役 割 につ い て もす べ り線理 論 な ど を用
いて解 析 され て い る5). これ らは い ず れ も微 小 変 形 を仮
定 した理 論 に基づ い て お り適 用範 囲 はお の ず と限 られ て
いる.亀裂先端近傍 で は, もはや 塑 性 加工 ともいうべ き
巨大 な 塑性 変 形 が不 可 避 な こ とか ら,大 変形 弾 塑 性理 論
と数 値解 析 法 として有 限要 素 法 を用 い る方法 も試 み られ
て きて お り, そ こで は亀 裂 の 成長 に重 要 な役 割 を果 たす
大 小 の 空 隙, ひず み の集 中化 の影 響 な ど多 くの例 に つ い
ての 研 究 が あ る6)~10).
これらの方法では,微小変形理論の仮定内よりもより
複雑で精緻 な解 析 が 可能 とな るが, それ は適 切 な大 変形
解析の理論 と物質の構成方程式に基づ くものでなければ
* 正会員Ph. D. 名 古屋工業大学講 師 社会開発工学科
(〒466名古屋市昭和区御器所町)
** 学生会員 名 古 屋 工 業 大 学 大 学 院(同 上)
*** 正会員 工博 名古屋工業大学助教授 社会開発工学
科(同 上)
**** 正会員 工博 名古屋工業大学教授 社 会 開発 工 学 科
(同上)