【土木計画学研究 ・論文集Vol, 20 no. 4 2003年9月 断片的なプローブ軌跡の接合による区間旅行時間の期待値と分散の推定* Estimation of Expectation and Variance for a Section Travel Time based on Fragmentary Probe Trajectories* 上 杉 友 一**,井 料 隆 雅***,小 根 山 裕 之****,堀 口 良 太*****,桑 原 雅 夫****** By Yuichi UESUGI, Takamasa IRY, Hiroyuki ONEYAMA, Ryota HORIGUCHI, Masao KUWAHARA 1. は じめ に 本稿 は,プ ロ ー ブ車 両 か ら得 られ る リ ン ク旅 行 時 間情 報 を用 い て,あ る対 象 区 間 の 旅 行 時 間 を推 定 す る 際 の,対 象とするプローブ軌跡の選択方法 と 期待値 ・分散の推定精度の関係 を検証するもので ある. 現在のプローブデータを用いた旅行時間推定の 可 否 は,プ ローブ車両の台数に大きく依存 してい る と言 え る.特 に,旅 行時間の推定対象 となる区 間 が 長 い場 合 に は,対 象 時 間 内 に区 間全 体 を完 全 に通過するプローブ車両の台数は,必 然 的 に減 少 して しま う. 方,情 報利用者のニーズで決定される情報提供 区 間 と,自 由意志 に基づいて行動するプローブ車 両の通過区間は,必 ず しも一 致 しない.ま た,タ クシーのようにある属性をもった車両 をプローブ 車両 として採用する場合,プ ロ ー ブ軌 跡 に もあ る 程度 の偏 りが生 じる と考 え られ る.そ のため,ニ ズに基づ く対象区間を完全 に通過するプローブ 軌 跡 は,ご く少数 しか存在 しない,あ るいは全 く 存在 しない,と い う状 況 が 容 易 に想 像 で きる. 実 際 に 、平 成12年 と平成13年 に横浜市域で実施 さ れ た プ ロ ー ブ実 験 で 得 られ た デ ー タ(1)をみ て も、 あ る属 性 を持 っ た 車 両 を プ ロ ー ブ と して 採 用 した 場合 には、プローブの経路の偏 りとサンプルの不 足 が 生 じる 、 とい う問題 を確 認 す る こ とが 出来 る。 そのため,対 象区間を完全に通過する車両だけで な く,対 象 区 間 を部 分 的 に 通 過 す る 車 両(図1参 照)の 旅 行 時 間 も推 定 に利 用 す る こ とで,推 定に 利 用 可 能 な旅 行 時 間 デ ー タの 数 を増 や す こ とが 望 まれる. また,ユ ーザ ーヘ 提 供 す べ きサ ー ビス とい う側 面 か ら考 え る と,対 象 区 間 全 体 の旅 行 時 間 の期 待 値 だ け で は な く,旅 行時間の変動幅や信頼区間のよ うな情報 も提 供すべ きで ある と考 え られる. そ こで 本 稿 で は,シ ミュ レー シ ョン に よ り再 現 さ れた交通状況 において,対 象区間を完全に通過す るプローブ軌跡を用いて,対 象 区 間 全 体 の旅 行 時 間の期待値 と分散 を推 定 した場合 と,対 象区間を 部 分 的 に通 過 す る プ ロ ー ブ軌 跡 も加 え て,対 象区 間全体 の旅行 時 間の期 待値 と分散 を推定 した場合 で,ど の 程 度 の違 いが あ る か を検 証 した.さ らに, 断 片 的 な プ ロ ー ブ軌 跡 を利 用 す る 際 に,後 の2章 で述べる交通工学的な解釈 ・処理を加えることに よ り,区 間全体の旅行時間期待値 と分散の推定精 度 が どの程 度 向 上 す る か,と い う点 に つ い て も検 証 を行 っ た. 図1: 完全又は断片的な旅行時間情報を持つプローブ軌跡 2. 複 数 リンク間 の 旅 行 時 間 と分 散 の 推 定 方 法 本 章 で は,対 象 区 間内 の複 数 リ ンク に お け る各 リ ン クの 旅 行 時 間 と分 散 か ら,区 間全 体 の 旅 行 時 間 の期 待 値 と分散 を算 出 す る方 法 につ い て述 べ る. キ ー ワ ー ズ:交 通 情 報,ITS,プ ローブ 学生員,東 京大学大学院工学系研究科 連 絡 先:〒153-8505東 京 都 目黒 区駒 場4-6-1 東京大学生産技術研究所 桑原研究室 正 会 員,工博,東 京 大 学 国際 産 学 共 同研 究 セ ン ター 正 会員,東 京大 学 生 産技 術 研 究所 正 会員,工 博,株)ア イ ・トラ ンスポー ト・ラボ 正 会 員,Ph.D.,東 京大学生産技術研究所 ―923―